2019/11/1
最近のニュースが思い出せなくなったり、少し前に家族から聞いたことを忘れたりしてしまうことはありませんか?もの忘れが少し多くなってきた、と感じたらそれは軽度認知障害なのかもしれません。
高齢者の4人に1人は、軽度認知障害あるいは認知症といわれています。この記事では、認知症の始まりといわれる軽度認知障害の症状や予防と対策などをご紹介します
軽度認知障害とは、認知症の初期症状である認知機能の低下がみられている状態のことを指します。
料理や買い物などの日常生活には支障を来さないため、軽度認知障害であると自分で気が付かない人も多いでしょう。軽度認知障害の症状として、同じ話を繰り返したり銀行口座の暗証番号を忘れたりします。
うつ病のように気分が落ち込み、無気力になることも軽度認知障害の特徴です。気分が落ち込むことで、趣味が楽しめなくなったり読書やドラマなどにも興味がなくなったりします。
生活のなかでは、お金の管理ができないことや掃除ができなくなったときに軽度認知障害の可能性もあると考えられます。
軽度認知障害の条件として、本人および家族から記憶障害の訴えがある、年齢や教育レベルだけで説明できない記憶障害がある、日常生活は普通にできるなどがあります。全般的な認知機能は正常でも、条件に当てはまる場合には受診を検討すると良いでしょう。認知症というものは、自分や家族にとって簡単に受け入れられるものではありません。そのため、軽度認知障害の症状が出ていることに気が付いても、加齢のためと考え病院を受診しない人も多くいます。しかし、軽度認知障害を放置していると、症状は悪化し5年間で約50%の人達は認知症になります。
軽度認知障害は、本人よりも家族が先に気が付くケースが多いでしょう。もの忘れが増えたと感じる場合には、どのような症状が出ているのかを家族が詳細にメモに残しておくようにしましょう。
病院を受診するときに、症状に関するメモが認知症の診断などに役立つケースもあります。症状が気になる場合には、かかりつけ医に相談して認知症専門の病院へ紹介状などを書いてもらっても良いでしょう。軽度認知障害であっても、症状が回復するケースもあります。
しかし、認知症へ移行していくケースも多いため、早期に軽度認知障害を発見していくことで対処方法などを調べることもできます。軽度認知障害を治療するために、微量の抗認知症薬を投薬する場合もあるでしょう。認知症発症のリスクといわれる糖尿病や高血圧などがある場合には、そのコントロールをするための治療をすることもあります。
日本の認知症患者数は、2012年時点で約462万人であると厚生労働省から発表されました。
65歳以上の高齢者のなかでは、約7人に1人が認知症だといわれています。軽度認知障害は約400万人いるとされており、2025年には75歳以上の認知症と軽度認知障害を合わせた人数は700万人になると予想されています。
また、認知症にかかる社会的なコストは2055年には24.3兆円になるとされており、認知症の患者数の増加に伴いコストも大きくなるでしょう。
平成29年版高齢社会白書では、2015年時点における認知症は約525万人ですが、2025年には約730万人、2050年に1000万人を超えるといわれています。65歳以上の人口に占める認知症発症者の割合は、2015年時点では16.0%ですが2050年には21.8~27.8%ほどまでに増加するといわれています。
認知症の増加を食い止めるためには、軽度認知障害のうちに発見し予防をしていくことが大切です。早期に認知症の症状に対処することで、約46%の人が健常の人と同じくらいまで症状が軽快するといわれています。そのためには、本人が納得したうえで病院を受診して、継続的に適切な治療を受ける必要があります。
また、生活習慣などを見直し、本人が日々の生活に取り入れていくようにしましょう。つまり、軽度認知障害がある人達が適切に治療をし、認知症を予防することで、認知症の将来的な人数は減少させることが可能だといえます。
若年性アルツハイマー病も徐々に増加傾向にあり、40~50代くらいで発症すると進行が早くなるという報告もあります。若年性アルツハイマー病の場合にも、もの忘れが多くなったと感じた場合には早めに医療機関を受診するようにしたいですね。
軽度認知障害は、日常生活のなかで自身で予防することができます。早めから対策をすることで、認知症が予防できるようにしたいですね。
軽度認知障害の予防として有効なのは、日記を書くことです。その日の出来事を日記に書くことに慣れてきたら、1日前や2日前にあった出来事を記入していくようにしましょう。こうすることが、認知機能をトレーニングすることにつながります。
また、軽度認知障害を予防するためにも食事に気を付けることが大切です。認知機能にも良いとされる不飽和脂肪酸や、抗酸化物質と呼ばれるビタミンEやビタミンCなどが含まれる食材を積極的に摂取するようにしましょう。
糖尿病は認知症の症状を進行させるといわれているため、糖質の取りすぎは控えることが大切です。新鮮な野菜を積極的に日々の食事で摂るように心がけたいですね。独居で買い物に行くことが難しい場合には、食材の配達サービスなどを上手に利用するようにしましょう。
食事と共に気を付ける必要があるのが、運動です。日々の生活のなかで有酸素運動が取り入れられるよう、散歩の時間を決めるようにするなどしたいですね。運動をすることで、脳血流が増加し免疫機能にも作用することで認知症予防にも良いとされています。運動を始めるときに、無理のある運動メニューでは長続きしません。
階段の上り下りを積極的に行うなど、生活に密着した運動を取り入れるようにすると継続して行いやすくなります。社会的動物である人間は、コミュニケーションをとらなくなると認知症が進みやすくなるといわれています。
また、ゲームやコンピューター作業などを用いた知的活動も効果があると言われています。一人でできるパズルや脳トレであったり、将棋や囲碁などの手先と頭を使う趣味をするのも良いでしょう。
他者とコミュニケーションをとることで、多くの刺激が脳に与えられ社会脳が鍛えられることが特徴です。地域で仲間づくりをすることで、他者の気持ちを思いやり言葉をかけることが日常的に行いやすくなります。自身で積極的に趣味サークルなどの社交の場へ行くように心がけたいですね。サロン活動などは地域ぐるみで行われているものもあるため、地域包括支援センターなどで問い合わせてみましょう。
また、達成感を感じることも軽度認知障害を予防することにつながります。絵画や裁縫などで作品を作り、かたちを残すものを作成することで達成感を味わうのも良いでしょう。趣味サークルの友人などと共同制作の作品を作ると、コミュニケーションをとりながら手先の運動などを行うこともできますね。
軽度認知障害は予防をしていても、発症してしまうことがあります。しかし、さまざまな予防法を試みることで、軽度認知障害の発症を遅らせることもできます。本人が楽しんで続けられるような予防策を、家族が一緒になって考えるようにしたいですね。若いころの夢を叶えるなど、新たな刺激ややりがいなどを与えるようにすると良いでしょう。
軽度認知障害の予防を始めるのに、早すぎるということはありません。食生活や運動などの日常生活に気を配るということは、軽度認知障害だけではなくさまざまな疾病の予防にもつながります。軽度認知障害を予防することで、健康的に生き生きと老後を送ることができます。家族も本人が楽しく認知症を予防できるよう、声かけしフォローしていくよう心がけたいですね。