2019/11/3
軽度認知障害と呼ばれる認知症の初期段階は、基本的な日常生活を送ることができるため発見が遅れることもあります。しかし、軽度認知障害は本人や家族が放置していると、症状が悪化し認知症へと移行するケースが多くあります。早期発見するためにも、軽度認知障害の症状や対策などを理解しておくことが重要です。
この記事では、軽度認知障害の症状や早期発見するためのポイントなどを紹介します。
認知症の前段階といわれる軽度認知障害には、特徴的なサインがあります。サインについて理解しておくことで、軽度認知障害かをチェックすることができます。本人がもの忘れに気付いていない場合には、家族が軽度認知障害のサインを理解しておくようにしましょう。
会話のなかで特徴的なサインには、何度も同じ話をする、ものの名前が思い出せない、日付や時間が言えないなどがあります。日付や時間がいえなくなることを、見当識障害といいます。
また、行動のなかで特徴的なサインは、外出が減る、趣味が楽しめなくなる、買い物のときに小銭を使わない、家電操作ができなくなるなどです。このようなサインに多く当てはまる場合には、軽度認知障害だと診断されるケースもあります。
働き盛りの40~50代くらいでも、軽度認知障害が現れることはあります。仕事の約束を忘れてしまい病院を受診した結果、軽度認知障害だったと診断されるケースもあるでしょう。
通帳や財布などの大切なものを置き忘れることが多くなったときにも、注意が必要だといえます。料理に失敗しやすくなったことやレシピが思い出せない場合なども、軽度認知障害を発症しているサインである場合もあります。
軽度認知障害が現れやすい人は、野菜を食べない、喫煙している、運動をしないなどが特徴的です。つまり、健康に気を配らない生活を長年送っている人は、軽度認知障害を発症しやすいといえます。また、耳が聞こえにくい人や目が見えにくい人も、軽度認知障害が現れやすいといわれています。
食生活や運動などにも気を配った生活を送ることで、軽度認知障害にかかるリスクを軽減することが可能です。また、将棋や囲碁など楽しみながら頭を使えるものも効果的です。最近ではスマホでもできるパズルや脳トレなどを習慣化するのも良いでしょう。
軽度認知障害は対処することで症状が消失する場合もありますが、悪化して認知症になることも多くあります。高血圧や糖尿病などの疾病を適切にコントロールすることで、軽度認知障害の症状が軽快することもあります。
軽度認知障害のサインがみられたら、スマヌ法を試してみましょう。スマヌ法とは、ス・ヌ・マのいずれかの文字を指で本人の背中に書き、書いた文字を当ててもらうチェック方法です。
スマヌ法を6回繰り返し、3回以上文字を間違える場合には軽度認知障害の可能性が高くなります。本人がテストを受ける意志がある場合には、家でも行える「長谷川式認知症スケール」を試してみましょう。
また、もの忘れが多くなってきたときには、記憶を補助できるような大きめのメモや薬のチェック表を作ることでもの忘れを防ぐことができます。普段よく使用するものは、ものの置き場所を決めておくことでものを無くしづらくできますね。
家族が離れて暮らしている場合には、ご近所さんなどの周囲に見守りをしてもらうことが大切です。ご近所さんと疎遠である場合には、民生委員に連絡しておくのも良いでしょう。
また、軽度認知障害のサインがみられた際には、運転免許証の返納を検討する必要があります。加齢に伴い運動能力や認知機能が低下することで、運転の際に判断が遅れてしまうケースもあるでしょう。軽度認知障害の疑いがある場合には、交通事故などを起こしてしまう前に免許を返納することを家族で話しあってみても良いですね。
軽度認知障害を発症すると、それまで当たり前のようにできていたことができなくなり気分が落ち込む人もいます。
そのような場合に、言動を強く否定したり議論したりしないようにしましょう。自尊心が傷つけられることで、精神的にさらに不安定になり症状が進むケースもあります。家族は本人の意志を尊重しながら対処するよう心がけ、前向きに軽度認知障害の治療ができるよう促すことが大切です。
軽度認知障害のサインがある場合には、認知症に移行しないよう運動をしたり手先を使う作業をしたりするようにしましょう。また、食事に気を配ることも認知症予防につながります。もの忘れなどが増えてきたと感じた際には、ビタミンC・Eが含まれる果物や野菜・魚を積極的に摂取するようにしましょう。
地域とのつながりをもち、コミュニケーションを多くとることでも脳を活性化させられます。楽しめる趣味がある場合には、地域の趣味サークルなどに参加してみても良いでしょう。
軽度認知障害を早期発見するためには、医療機関を受診する必要があります。医療機関への受診は、本人や家族がもの忘れなどに違和感を覚えたときにするとよいでしょう。
認知症専門の病院を受診することに抵抗がある場合には、まずかかりつけ医に普段の様子を相談します。本人が普段の様子を伝えることが難しい場合には、家族が受診に付き添いましょう。
軽度認知障害を調べるためには、心理テストやMCIスクリーニング検査をする必要があります。
MCIスクリーニング検査とは、軽度認知障害のリスクがどの程度かを調べることができる血液検査です。血液検査では、神経細胞を破壊するといわれているアミロイドβペプチドを排除するためのタンパク質について調べます。低リスクの検査であり少量の血液を採取するだけで調べられるため、本人への負担も少ないことが特徴です。
早期発見できることが血液検査のメリットであり、軽度認知障害を発見しやすくしています。肝硬変や腎障害などの疾病をもつ人はMCIスクリーニング検査ができないケースもあるため、担当医にあらかじめ伝えるようにしましょう。
軽度認知障害の検査を受けるためには費用が2~3万円ほどかかり、平均して60分ほど時間がかかります。対象年齢が50歳以上など年齢が決められている病院もあるため、検査を受ける前に確認するようにしましょう。検査の結果がでるのに、2~3週間ほどかかります。検査の結果はAからDの4段階で診断され、Aが健常、Bが低リスク、Cが中リスク、Dが高リスクとなります。
Aの場合には1~2年後に検査を行うようすすめられ、Dの場合には2次検査をすすめられるケースもあります。検査結果がAの場合でも、軽度認知障害を予防するための運動や活動などは積極的に行うようにしましょう。
MCIスクリーニング検査は、高齢になったら1年に1回は受けることが大切です。また、認知機能低下の遺伝子を調べることができるApoE遺伝子検査もあります。
ApoE遺伝子は、アルツハイマー型認知症の発症に影響を与えるとされています。MCIスクリーニング検査と同様の採血で調べることが可能であり、ApoE遺伝子検査とMCIスクリーニング検査は同時に受けることも可能です。
どちらの血液検査も健康保険適用外となるため、高額になることがデメリットだといえるでしょう。
しかし、軽度認知障害が疑われる場合には、早期に発見し治療を行っていく必要があります。もの忘れが気になるようになったら、1年に1度は検査を受けるように心がけましょう。早期に対処しておくことで、軽度認知障害がある場合でも認知症への進行を食い止めることができるケースもあります。
認知症になり症状が進んでしまうと、生活の質が低下し本人や家族も日常生活を送ることが困難になるケースがあります。
軽度認知障害を早期に発見することは、認知症を防ぐことにもつながります。軽度認知障害のサインは見逃さず、受診につなげていくようにしたいですね。軽度認知障害の検査や受診などは後回しにせず、早めに行うようにしましょう。